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バーンインノイズの完成度が上がってきたのでSRH1540でテストを行った。 このSRH1540。私は全然高く評価していなかった。バーンインノイズを流していない状態だと、「素性は良いけど、所詮そこ止まりの音」だし、バーンインノイズを流しても解像度は上がっても音色が抑圧された感じが抜けずにいまいちな仕上がりだった。どうもSRH1540の振動板は歪が入りやすく抜けにくい特性のようで、バーンインノイズを流しても音質が良くなるまで時間がかかるようだ。その特性ゆえノイズ波形を小変更してもそれに対するレスポンスが悪く、音質変化が小さい。それゆえ波形の微調整には全く向かない。この特性から「これは、完璧なノイズかそれに近いノイズを入れない限りSRH1540は良い音で鳴ることはないだろう」と感じたので、SRH1540はノイズの最終チェック用に使うことにしている。SRH1540をうまく鳴らせるなら他のヘッドホンもうまく鳴らせるだろうと考えたわけだ。 公開しているバーンインノイズには、「適正な音量でないと良い音が出ない。音量調整がかなりシビア。」と言う問題があったが、今回この問題は解決している。波形を工夫してボリュームが大きくても入った歪を除去できるようにしている。なので今回はDR.DAC3のボリューム全開で鳴らしている。 また、連続再生耐性については原理的に無理のようなので、潔く諦めてキャンセルノイズを作って固有歪を消す方式にした。今回は急造のキャンセルノイズなので後からちゃんとしたの作らないといけないのだが。 ボリュームはDR.DAC3でボリューム全開(6.48Vrms@1kHz,fullscale, 46Ωload)で183回再生した。 今回作ったノイズでSRH1540でもかなり良い音が鳴るようになった。今までは解像度は良くなっても音色が抑圧された煮え切らない、どこかしら無理した感じの音だったのだが、今回は抑圧感の無い、無理のない音になっている。それと低音の量感が変わった。バーンインノイズ未再生時は低音がかなり盛った感じだったが、今回はほんの僅かに盛った感じになっている。そして何より中高域にかけては無理のない自然な感じで、この点においてはnightowl carbonよりも良い。低音は盛っている出音だが、音色は常識的な範囲に収まっている。 傾向はニュートラルだがややほんの僅かにソフト傾向。そしてややほんの僅かに低音盛り。感情表現豊か。詰まり感なし。閉塞感なし。抑圧感なし。解像度はEPT-700(02s91 LRSWHN741, 2.406Vrms, +470段)の360段程上。と言うことはHD650(標準ケーブル)の830段上ってところ。奥行きは39m。ややソフト傾向だが、濁りでソフトになっていると言った感じではなく、そのくせ異常にクリアに聴こえる。現状では解像度や奥行きではnightowl carbonに分がある感じなのだが、その差は1割もないといって良い。音色に関して言うとSRH1540の方が上で、ややSRH1540の色が乗る感じだが表現力はnightowl carbonよりも良い。だが良く聴くと音の芯が若干弱く感じられて芯の強さがもうちょっと欲しいと思った。 いままでnightowl carbonの方がSRH1540よりも音質は上と評価してきたが、今回はその評価が覆されてしまった。nightowl carbonもノイズの流し方や回数によってSRH1540よりも良い音が出せるのだろうが、どちらも音質が格段に上がっているので相対的に両機種間の音質の差はほとんど意味のないものになっている。差があるとすればSRH1540は低音をやや盛った傾向なのだが、それでいて周波数特性もなだらかなので、比較的素直で各楽器の音色や歌声の良さを出しやすいのだろう。ただし音の芯が弱めになりやすい。音色の関してはnightowl carbonはSRH1540より箱の音が大きめで、その影響で硬めの音に仕上がりやすい傾向にある。ドライバーユニットの性能はnightowl carbonに分があるようで、nightowl carbonの方が奥行きと解像度は出やすい傾向。 SRH1540のPEEK素材は歪が入りやすく抜けにくい特性のようで、歪が抜けるのにかなり時間がかかった。再生回数が60回の場合はまだnightowl carbonの方が格上の音を鳴らしていたが、100回〜120回あたりから音色の抑圧感がなくなってnightowl carbonと同格の音を鳴らせるようになった。もしかしたらSRH1540のPEEK素材も意外と鳴らしにくい素材なのかも。 だが、SRH1540にポテンシャルがあると褒める気にはなれないな。。。ポテンシャルがないわけではないのだが、良い音が鳴った理由として私のノイズが優れているのが一番の理由だし、SRH1540はレスポンスが悪いヘッドホンで、今まで一度たりとも私の思った通りの音で鳴ったことはない。いわば言うこと聞かないヘッドホンだ。かわいげなんか全然ないし。今回初めて私の思い通りに鳴ってると言っても良い。それだけ鳴らすのが難しいヘッドホンなのだ。これと比べたらnightowl carbonは言うこと聞いてくれるし全然鳴らしやすいヘッドホンだと思う。その難物を良い音で鳴らせるようになったら、「そりゃ鳴らしている奴が凄いんであってヘッドホンはすごくないよ」と言いたくなるのが人情だ。だけど冷静に考えると設計がダメダメならバーンインノイズが良くても良い音には仕上がらないでしょうし、nightowl carbonよりも部分的にだが優れた音が出ると言うことは、SRH1540の設計にもある種の妥当性があるのだろう。私がSRH1540がnightowl carbonよりも優れていると感じているのは、箱の音がnightowl carbonよりも少ないこと。nightowl carbonはハウジング形状が特殊だからか、やや癖を持った響きが乗るようだ。また周波数特性がnightowl carbonよりもなだらかで、それがより自然な音に繋がっているのだろう。今までSRH1540なんて「カーボンファイバーにアルカンターラにPEEK素材!と流行素材ちりばめて適当に作っただけなんだろうな。このヘッドホンがまともに見えるのはカタログの中だけだよw」と思っていたが・・・いやSRH1540を少し見直した! おそらくHD650でも同じくらいの音質が出せるだろう。いや開放型な分HD650の方が良い音が出せる可能性は高いが、HD650は基準として使っているからな。弄りたい気持ちもあるがここはぐっと我慢しておこう。 ところで、このバーンインノイズをどこかでダウンロード販売しようと思う。自分の為に作ったノイズなので、自分だけの特権として使うのも良いのですが、それだとただの自慢になっちゃうし。一応欲しい人は手に入れられる状況にはしておこうと。それとこの偉業は世の中に残しておかないとな。 問題はいくらにするかですが、効果を考えたら数万で売っても問題ないだろうが、このノイズはあまりにも先進的過ぎるので誰一人理解できないだろう。使って初めてその価値を理解する類のものだ。ではタダで配るか?それだとこのサイトで配信するのと変わらない。そもそもそれはやったがレスポンスないし、やっててつまらなかったのでやめることにした。つまらんことはやらない主義なので。あとはあまり安くするのも自分の作品の価値を低く見積もるようで嫌だ。 極端な話、値付けの仕方として「俺の作品は世界最高の芸術だ!1億円の価値がある!だから1億円で売る」と言うのは理論的には正しいが、現実的ではない。"超"一流を自認する松任谷由実もそういう売り方はしてないようだ。と言うわけで周りの価格をキョロキョロ見渡して、相場に合わせることにしよう。なぜその価格なのかは説明できないのだが、見えない力で決まっている価格なのだろう。
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2021/02/15 執筆
2021/04/09 公開
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